「英文法は完璧にしたはずなのに、一文が複雑になると訳せない…」 「SVOCを振る練習はしたが、結局『なんとなく』のフィーリング読みに戻ってしまう…」
「使える」英文法の知識を習得した受験生が、次にぶつかるのがこの「壁」です。英文法のルール(点)を学んでも、それをどう使って目の前の一文を正確に読み解くか(線)という「技術」がなければ、英語長文(面)という戦場では戦えません。
この記事では、その「点」と「面」をつなぐ、英語学習の「要(かなめ)」である英文解釈の学習戦略を解説します。この訓練法は、「精読(正確に読む力)」と「速読(速く読む力)」を両立させるものです。
1. なぜ「英文解釈」が絶対に必要なのか?
多くの受験生が「文法が終わったら次は長文だ」と焦りますが、これは無謀です。この「英文解釈」のステップを飛ばすと、いつまでもフィーリング読みに頼ることになり、難易度の高い文章(特に和訳問題や内容一致問題)で確実に行き詰まります。
学習のロードマップにおける各ステップの役割を再確認しましょう。
- 英文法 = 単語やルールの「知識」
- (例:「to不定詞には3つの用法がある」と知っている状態)
- 英文解釈 = 文法知識を使い、一文一文の構造(SVOC)を正確に把握し、訳す「技術」
- (例:「目の前の文のto不定詞は、文のS(主語)になっている」と見抜ける状態)
- 英語長文 = 英文解釈の技術を使い、複数の文をスピーディーに読み解き、全体の意味を掴む「総合力」
英文解釈とは、複雑なパズルのような一文を、文法というルールブックを片手に分解・分析し、「どの単語が主語(S)で、どれが動詞(V)か」「このthatは何を修飾しているのか」を特定する訓練です。この「一文を正確に読み解く技術」なしに、長文読解は始まりません。
2. 「精読」と「速読」を両立する「2周学習サイクル」
英文解釈の学習は、目的の異なる「2周」で1セットです。1冊の英文解釈の参考書(例:『英文読解入門基本はここだ!』、『ポレポレ英文読解プロセス50』など)を、以下のサイクルで完璧に仕上げます。
ステップ1(1周目):「分析フェーズ」で“なんとなく”を破壊する
1周目の目的は、「精読」の技術を確立することです。スピードは一切意識せず、「100%の正確さ」だけを追求してください。
- 自力でSVOC分析と和訳を行う: まず、学習する英文に対し、自力でSVOCや修飾関係(カッコでくくるなど)を徹底的に書き込みます。そして、それに基づいた「直訳」に近い正確な和訳を作成します。
- 解説を熟読し、分析を修正する: 解説ページを読み、自分の分析や和訳とどこが違ったのかを徹底的に比較・検証します。「なぜ、自分はこの単語を主語だと思ったのか?」「なぜ、この句は動詞ではなく名詞を修飾するのか?」という「なぜ」を潰します。
- 「なぜ」を文法書に戻って確認する: もし分析が間違っていたら、その原因は必ず「文法の知識不足」または「知識の運用の仕方を知らない」ことです。放置せず、総合英文法書に戻り、該当単元(例:「関係代名詞」「倒置」など)を復習し、理解を固め直します。
1周目で重要なのは、「フィーリングで正解した」を許さないことです。「なぜ、その構造になるのか」を他人に説明できるレベルで、テキストの英文すべてを分析し尽くします。
ステップ2(2周目):「統合フェーズ」で“返り読み”を矯正する
1周目で文構造が完璧に理解できたら、2周目の目的は、「速読」の土台となる「直読直解」を習得することです。
直読直解とは、「英語を頭から語順のまま理解し、日本語を介さずに英語のまま意味を捉えること」です。
- 構造を意識しながら「音読」する: ステップ1で完璧に分析した英文(構造が頭に入っている状態)を、今度は「音読」します。
- 「返り読み」を絶対にしない: この時、「私は / 買った / 本を / 昨日…」のように、日本語の語順に直すための「返り読み」を脳内で行うのを禁止します。
- 英語の語順でイメージを掴む: (I bought / a book / yesterday.) 「私が買ったんだ / 一冊の本を / 昨日ね」 このように、前から意味のカタマリごとに理解していきます。構造がわかっているので、これが可能なはずです。
ステップ1で「分解」した英文を、ステップ2で「英語の語順のまま再統合」するイメージです。この「直読直解」のトレーニングを繰り返すことで、脳が英語の処理スピードに慣れ、速読力が飛躍的に向上します。
この「精読(分析)」と「速読(統合)」のサイクルこそが、受験英語で求められる「正確かつ速い読解」を両立させる唯一のトレーニングです。
3. 【最終ステップ】英文解釈の「次」に何をすべきか
英文法(レベル1)を終え、この英文解釈(レベル1)のテキストを完璧に仕上げたなら、いよいよ次のステップに進む準備が整いました。
(正しいロードマップ) レベル1の文法 → レベル1の英文解釈 → レベル1の英語長文
そうです。英文解釈で培った「一文を正確に読み解く技術」を武器に、いよいよ「英語長文」の演習に入ります。
これまで学んだ知識と技術を総動員し、複数の文(パラグラフ)で構成されるまとまった文章を読み解いていきます。最初は時間がかかっても構いません。英文解釈のステップで学んだように、一文一文の構造を正確に把握することを意識しながら読み進めましょう。
英文解釈は、英語学習全体における「ピボット(回転軸)」です。地味な訓練ですが、このステップを堅実にこなすことが、あなたの英語力を「知識」から「本物の読解力」へと変革させる鍵となります。


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